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南トルコ・アンタルヤの12ヶ月*** 地中海は今日も青し

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 (10)続々・父兄懇談会


《9月―頭の痛い季節》 ~2003年9月の記録

 ∬第10話 続々・父兄懇談会

翌木曜日は、代わって上の娘の私立学校で父兄懇談会が開かれた。

遅れて入った教室には、すでに何人もの教師たちが詰めており、順番に挨拶と教科の説明を行っているところだった。
ガイダンス専門の教師は、今学期からの初の試みとして土曜日に開設が決まった、課外授業の説明を始めていた。
各種スポーツや絵画、英語、パソコンなどの授業を予定しており、時間や教科の詳細、料金については追って連絡しますと言って、さっさと退室していった。

私の頭の中で、またもやウチレット(料金)という言葉が鳴り響いた。
なぜこうも、トルコの学校はとかく別料金として徴収しようとするのだろう・・・・。
あらゆる活動が金儲けの機会としか考えられないのだろうか・・・。
教師にとって都合のいい副収入の道として、アルバイト感覚で考えているのだろうか・・・。
年間の学費として支払っているあのお金は、一体どこに使われているのだろう・・・。
やはり耳にする通り、経営陣の懐に入るだけなのか・・・。

そんな考えが浮かんでは消え、もやもやと割り切れない思いで、私は続く教師たちの顔を眺めていた。
美術の教師は、土曜日の課外授業の宣伝をしては消え、体育教師は昨年同様バレエの時間の可能性を匂わせ、音楽教師は聞いていた通りオルガンとギターのレッスンについて説明。ただしオルガンは家から各自持参(!)することと、通学バスでは難しいから、各父兄に送り迎えしてもらうこと。
どの教師も、教科内容についての説明より、有料で行う課外授業の説明に力を入れているようだった。

授業の質や設備の向上に努めないで、足りない部分は父兄からさらにお金を徴収してそれを補おうとする。どうやら、幼稚園でもこの学校でも、考えるところは同じのようだ。
しかし、こうした有料制の課外授業を、他の父兄はごく当たり前のこととしてとらえているか、むしろ歓迎しているようなふしさえ見受けられるのだから、私はつい首をひねってしまうのだった。
標準の教科を充実させること。例えば音楽であれば、楽器やオーディオ機器を導入して、より幅広い音楽経験をさせてあげるべきだろうし、さらに音楽経験を増やしたい子供にはクラブ活動の時間を設けて、コーラスやオーケストラのグループを作ってあげるというのもいい。

試しに音楽教師にそんな考えをサワリだけ披露してみたのだが、言うだけ無駄だということがすぐにわかった。
なにより教師たちは、時間外活動に無償で付き合う気はまるでないようだし、クラブのような活動をオーガナイズすること自体、面倒だと考えているようなのだ。
大体、ワープロを使ってリストを作ったり、コピーして渡すというごく基本的な事務処理すらしないで、すべて口頭で済まそうという教師さえ少なくないのだから、押して知るべし。
日本の標準的な学校生活を説明したとしても、トルコの学校では理解すらされないかもしれない。

熱に浮かれたように、バレエだ、ピアノだ、絵画だ、バスケットボールだと、有料の課外授業の充実に目を輝かせる父兄がおかしいのか。父兄の皆さまへの耳寄りな話、とでも言いたげに、それを声高に宣伝する教師がおかしいのか。これまた熱に浮かされたように、学校内での教育の充実を訴える私がおかしいのか。
それぞれに間違った教育熱が狭い教室内で一度に噴出したような、そんな熱い時間が流れていった。

各教科の教師が退出し、担任教師ひとりになると、教室内の温度はようやくすうっと下がっていったように見えたのだが・・・
出番のやってきた担任教師を待ち構えていたのは、いまだ解決を見ない教科書問題と、新たに勃発した買い食い問題だった。

 つづく

∬第11話 続・続々・父兄懇談会



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